アガサクリスティ

アガサクリスティ「暗い抱擁」こんなに面白いのになんで有名じゃないの⑥テーマがてんこ盛り!

今回ご紹介する「暗い抱擁」は、メアリ・ウエストマコットシリーズの第5作目だ。

ところで、メアリ・ウエストマコットの一番人気作と言えば「春にして君を離れ」だ。

春にして君を離れ
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「春にして君を離れ」詳しくはこちらから

この作品に比べて、「暗い抱擁」は聞いたことがなかったし、正直あまり期待せずに読んでみたら・・・・

内容のとんでもない深さに驚愕した。

しかも構成が、軽いミステリーにもなっている。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
文句なく、ネコ缶が独自に設定している「こんなに面白いのになんで有名じゃないの」シリーズに入れたで!

こんなに面白いのになんで有名じゃないの」シリーズはこちら

ではいってみよう!「暗い抱擁」!

アガサクリスティ「暗い抱擁」あらすじ

事故で体が不自由になってしまったヒュー。

不毛な恋にもピリオドを打ち、療養のためにセント・ルーに移転する。

そこは近々総選挙が行われるところ。
ヒューの世話を焼いてくれる義姉テレサは、家事の傍ら、忙しく選挙の手伝いをしていた。

ある日、ヒューは保守党候補のゲイブリエルと会う。

先の大戦でヴィクトリア勲章を取った34歳の男で、お世辞にもイケメンとは言えないし、紳士でもなかった。

政治家になるのも、崇高な目的があるわけでもなく、ただの楽な仕事口と言い、選挙はお祭り騒ぎと言い放つ。

そして何より彼は、焼けつくような階級コンプレックスを内面にかかえていた。

だがパフォーマンス能力に優れていたゲイブリエルは、不思議と人を惹きつけ、セント・ルーの人気者となっていく。

そんな中、ダンスパーティが開催され、ゲイブリエルは、セント・ルーの貴族の娘イザベラとダンスをする。

そこで一体何が起こったのか?

その後、ゲイブリエルは当選をしたのに、イザベラと駆け落ちをしてしまうのだ。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
しかもイザベラには婚約者がいたんやで・・・

何もかも捨てた二人は、幸せになったのだろうか。

ゲイブリエルは階級コンプレックスを、お姫様のようなイザベラを得ることで、克服することができたのか?

ラストに注目だ。

アガサクリスティ「暗い抱擁」感想

タイトルにも入れたが、「暗い抱擁」はテーマがてんこ盛りだ。

格差社会とその底辺にいる人物のコンプレックス、愛、共依存、選挙の実態、シェイクスピア・・・・。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
何か1つ狙いを定めると、小さな論文がかけそうなくらいだ。

ネコ缶も書きたいことはいろいろあるが、ゲイブリエルという人物に絞って書いてこうと思う。

「暗い抱擁」見どころ ゲイブリエルの魅力とは

ゲイブリエルは、おおよそモテそうな男ではない↑違うで。

ハッキリ醜いと書いてあるうえ、背も低く、足がどうも悪そうなのだ。

だがこの男、かなりモテる。

「暗い抱擁」の出だしはゲイブリエルの臨終から始まるのだが、そこにいたのは彼を崇拝する女性・マダム・ユーグービアンだ。

ミリーという人妻も出てくるが、この女性も彼の強烈なファンになる。

そのうえセント・ルーの、お城のおばあさま方も、結局彼を認めてしまう。

醜いけれども人を、女性を魅了してしまう男性というのは確実にいる。

遠藤周作の書いた「マリーアントワネット」のカリオストロという男も、相当醜い。

でも盗みの計画をしている時の彼には、マリーが思わずみとれたとある。

王妃 マリー・アントワネット
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ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
めっちゃ面白いし、読んでみてな!

 

女性を惹きつけるのは、プラスでもマイナスでも、エネルギーの量ではないかとネコ缶は思うのだ。

 

エネルギーの多い男性は、女性を惹きつける。

なぜかわからないが「どうしようもなく」惹かれてしまうのだ。

 

ゲイブリエルのエネルギーは、かなり屈折していたが、相当のものだったろう。
長年培った階級コンプレックスやしな

そのギラギラした何かが「どうしようもなく」人を惹きつけるのではないか・・・と思う。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
テレサは別やったけどな!

「暗い抱擁」見どころ コンプレックスを克服させる愛

今回のテーマは、おそらくこれではないかと思う。

「暗い抱擁」は戦後すぐに出版されているが、イギリスにはまだまだ根強く格差社会が残っていたのだろう。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
貴族とか、まだいたんやろうなあ・・・

ゲイブリエルは、その底辺ともいえるような環境で育ち、貴族たちを激しく憎んでいる。

そしてお高くとまった彼らを、そこから引きずりおろしてやろうと思っているのだ。

ああいった高慢ちきな、上流婦人というやつがおれは無性に憎いんだ。
(略)奴らにとっては、おれはいつまでも虫けらさ!

「暗い抱擁」P89

 

その引きずりおろす対象になったのがイザベラだ。

お城で王女のように育てられ、祖母や叔母にかしずかれている彼女に対し、屈折した思いを持つゲイブリエル。

そんなゲイブリエルを、なぜか受け入れてしまったイザベラ・・・。

そのまま行けば、イザベラは城で従兄と幸せに暮らせたのに、なぜゲイブリエルを選んだのか?

残念ながら、そこは一切書かれていない。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
イザベラの気質もあるけどな

なぜ選んだのかは解らないが、ラストを見ると、間違いなくイザベラはゲイブリエルを愛していた。

そこに気づいたゲイブリエルは、その愛で最終的にコンプレックスをはねのけることができる。

その後、新しい人生(ファザー・クレメント)を歩くことができたのだ。

イザベラ側から何も書いていないが、ここまで人を変えることができたのは、相当大きな愛情だったのだという事が解る。

これが「暗い抱擁」の愛のテーマだったのではないだろうか・・・とネコ缶は推測する。

ネコ缶さとこ
ネコ缶さとこ
「暗い抱擁」は、ラストまで読んだ後、必ずまた最初に戻って読んでな!

アガサクリスティ「暗い抱擁」まとめ

ネコ缶評価

ものすごく引き込まれる内容だった。

10点にしても良かったのだが、マイナス0.5の理由がこれ。

背表紙のあらすじと内容が違いすぎ
・タイトルがまずすぎ

早川書房で読まれる方は、裏表紙のあらすじを読まへん事。
そしてタイトル(暗い抱擁)を、気にせーへんことをおすすめするで!

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