ネコ缶、クリスティはこれを書かせたらうまいと、常々言っていた。
- 問題のある家族
- 人間の感情や本質(特に女性)
- 遺産相続のゴタゴタ
- 元薬剤師という観点からのマニアックな毒殺ネタ
ただ、今回ご紹介する「蒼ざめた馬」はそのどれでもない。
どちらかと言うと、ちょっとオカルトチックな感じもある。
ポアロやマープルを読んできたネコ缶にとっては、異色の作品に思えた。
でもやっぱり、この一言だ。
超面白い
クリスティの得意技もふんだんに生かされているし、オカルトっぽいと言いながらも、ゾンビが出てくるわけでもなければ、幽霊が出るわけでもない。
なので、ミステリーを読んだ後に時々感じる、この後味の悪さを全く感じなかった。
ではみていこう。クリスティ異色の、オカルトチックな「蒼ざめた馬」。
Contents
アガサクリスティ「蒼ざめた馬」 あらすじ

ゴーマン神父は、熱病で臨終の時を迎えている女性・デイヴィス夫人の家に呼ばれた。
デイヴィス夫人は、苦しみながらうわ言でこう言い、息絶えてしまう。
その後、ゴーマン神父は帰宅途中、デイヴィス夫人から聞いたいくつかの名前を書き留めて、靴の中に入れておいた。
そしてなぜかゴーマン神父は、この直後に撲殺されてしまう。
ゴーマン神父が、持っていたメモに書かれた名前の何人かは、死んでいる事も判明した。
その事実を知った学者マークは、迷いながらも真相解明を決意。
調査を進めると「蒼ざめた馬」という古い館で、3人の女が魔法で人を呪い殺しているらしい・・という情報を得る。
そして「蒼ざめた馬」に誰かを殺してもらうには、とある所でお金を賭けないといけないという事も。
女性たちは、本当に呪いで人を殺しているのか?
それとも呪いを利用した、大掛かりな犯罪なのか?
ジンジャーという女性とタッグを組んだ、マークの体当たりの捜査の結果は?
アガサクリスティ「蒼ざめた馬」 感想

「魔法・魔術で殺人は可能なのか」
これが「蒼ざめた馬」のメインテーマだ。
普通に考えたら絶対に無理だろうと思うが、21世紀になった今でも、化学で証明できないことはいろいろある。
今回の主役・マークは、その「無理だろう・・・いや、この人なら出来るかも・・」という2つの考えの間をぐるぐる回る。
そして真実を知りたいと、協力者を得て実験・捜査をしていくのだ。
そして読者も、必然的にマークと同じ目線に立つ。
もしかしたら、本当にこの人たちは呪いで人を殺しているんじゃないか・・・?
ラストまでどっちかがよくわからないので、最後はこうなること請け合い。
日本でも「5寸釘」「丑の刻参り」があるから、魔術や呪いで人を殺めることは否定しきれない。
クリスティはやっぱり人間の本質を書くのがうまいな!
「蒼ざめた馬」面白ポイント1 マニアックな毒殺

クリスティは、元薬剤師だった知識を生かして、様々な毒を使った殺害を書いている。
「蒼ざめた馬」でも、そのマニアックな毒殺は健在だ。
ネタバレになるから、詳しくは書けないが、最近の毒殺はたいてい青酸カリと相場は決まっている気がするので、クリスティを読むと、
と、時々感動する。
しかも「蒼ざめた馬」では、その毒を使ったときしか出ない症状から突破していくので、爽快やで!
「蒼ざめた馬」面白ポイント2 意外なところで意外な人物に会える

クリスティ作品には、クリスティの分身かと思うようなキャラが出てくる。
その名は「オリヴァ夫人」。
ポアロ作品に時々出てくる、ミステリー作家のオバサマだ。
事件に関係ないような発言も多いが、意外と的を得た発言をしてくれることもある。
そして気ままにふるまってくれて、ストーリーにユーモアと動きをもたらしてくれる、そんなキャラだ。
「蒼ざめた馬」でも、そんなオリヴァ夫人が登場。
そしてただ出るだけでなく、重要なヒントも話してくれて、結構重要な立ち位置にいる。
また、マニアにとって嬉しいことに「死者のあやまち」のエピソードも「蒼ざめた馬」で、ちらっと話してくれてるのだ。
「犯人捜しのゲームを企画したら、いきなり本物の死体が出てくるんだもの。
あたしは、あの時の傷がまだ癒えてないんですからね!
「蒼ざめた馬」 P29

ノンシリーズ(クリスティの、ポアロもマープルも出てこない作品集のこと)でも、これからオリヴァ夫人が出てくるんかな?
楽しみやな!
アガサクリスティ「蒼ざめた馬」 まとめ

ネコ缶評価
1人の超怪しい人間がいるのだが、この人間にスポットライトが当たりすぎて、肝心の人を見逃していた・・・・・ということになりがちな物語。
伏線も見事で、円熟期のクリスティのすごさを感じさせる。
連続殺人や、密室、ダイイングメッセ―ジなどの派手さは全くないが、特に欠点も感じない・・・そんな物語だ。
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